お向かいの

◆ボロアパートからもう二週間前からはためいているお洗濯ものが見える。
内容から見ると男子学生かなぁ。。
なかなかナイスバディではないかと勘ぐってしまいたくなるような、
イマドキのパンツが干してある。
水着に着替えるのに小学生がつかうバスタオルをゴムで括って
スカート状にしたようなのが干されていたりもしている。

うう。。こうやって私が毎日干している、あるいは連日干しっぱなしにしている大きなブラジャーとか
おパンツとかも見られてるのかなぁ、、
と思いながら。。

子どもたちを庭で遊ばせつつ、水鉄砲を洗濯物にかけまくるのを
大声でどなりつつ庭に立ってぶらぶらしていると、
急に突風が吹いて、お向かいの洗濯物がどすん。と音を立てて竿から落ちた。
その中のおこぼれがうちの塀まで落ちてきて引っかかった。

内心、いろんな思いが脳裏を駆け巡った。
手を伸ばせばこのTシャツが手に取れる。
それをどうしよう。。
アパートまで届けていいのだろうか、
余計な事して顔が知られて、あるいは相手の顔を知ってしまって
恋に落ちてしまったらどうしよう。
逆にストーカーされて最終的には殺されちゃったらどうしよう。
この子どもたちを残して死ぬなんてとてもできないわ。。


ちょっと間があいてお向かいの窓がガラッとあいた。
瞬時に私は身を潜めてしまった。
庭には居たままだけれど、お向かいのバルコニーからは見えない場所に。

アタシ、何をしてるんだろう。
洗濯物取ってやって渡すんなら今のうち。
（顔を見るんなら今のうち）
（顔を見せるんなら今のうち）

アタシ、ナニヲカンガエテイルンダロウ・・・

悶々としているうちにお向かいの学生さんは目に見えているだけの
お洗濯ものを取り込んで窓をまた閉めていなくなった（音がした）

今でも洗濯物は塀に引っかかったまま。
学生さんには見えない場所。
暗くなった今でもそのまま。

明日夫が見つけるだろう。

それからどうなるだろう。。